ブラックホールという言葉は、天文学を全く知らない人でも知っている言葉です。
ブラックホールとはそもそも何なのでしょう。
一般的には、
「光も出てこれない物体」
と言われます。
ならば、どのようにして存在を知ることができるのでしょうか。
■ ブラックホールとは?
ボールを投げてみることを考えます。
私たちのような普通の人なら数十メートルくらいでしょう。プロ野球選手なら100メートルくらいは飛ぶはずです。
投げたボールが地球の重力で引き寄せられるため、ボールは落ちてきてしまいます。
では、この速度をどんどん上げていったらどうなるでしょう。
その例がロケットです。ロケットは地球の半径よりも遠くまで飛ばせるので、地球を一周して戻ってきてしまいます。
これを利用したのが人工衛星です。
さらにこの速度を上げて、秒速11.2km以上で飛ばすとどうなるでしょう。
ロケットは、地球の重力を振り切って遠くへ飛んでいってしまいます(これを脱出速度と言う)。
これが探査機です。
探査機は一度地球の重力を振り切ってしまうと、探査機自体が燃料を噴射して軌道修正をしない限り、2度と地球には戻ってこれません。
【脱出速度の計算】

この式を見てわかるとおり、脱出速度に物体の質量は関係ありません。
つまり、どんなに重たいものでも、秒速11.2km以上で飛ばすことができれば(これが問題ですが・・・)、地球を脱出することができるのです。
では地球よりももっと重くて重力が大きい天体(質量が大きい=重力が大きい)の場合を考えましょう。
重力が地球よりも大きいので、当然、秒速11.2kmで打ち上げても脱出できません。
しかし、もっと速い速度で打ち上げれば脱出できるはずです。
さらに重力をどんどん大きくしてみましょう。
重力を大きくするということは、脱出するための速度も大きくなります。
こう考えていくと、やがて速度の上限に達してしまいます。
現在の物理学では、速度の上限は光の速度(秒速約30万km)と定めています。
したがって、この速度でも脱出できないほど重力が大きくなると、光すら脱出できない天体、すなわちブラックホールに
なるのです。
ブラックホールの存在は1785年(徳川吉宗の死後34年あまり)にイギリスのジョーン・ミッチェルによってニュートンの万有引力の式から予測されていました。
次いで、フランスの数学者、ラプラスによって1795年に提唱されています。
日本の科学がいかに遅れていたかを象徴している事実です。
■ ブラックホールを作る
どうやればできるかは別にして、地球をどんどん圧縮してみましょう。
地球の場合、直径は12,800kmあります。
これを1.8cmまで圧縮することができれば、それはブラックホールになります。
質量は、1兆トンかける10の60億乗(1兆の後ろに0が60億個付く)というとんでもない大きさになります。
これほどまで重力が大きくなると光も脱出できなくなり、ブラックホールの誕生です。
脱出速度の式(2)で半径rを小さくしていくと速度は光の速度に達します。
この半径をシュバルツシルト半径(または重力半径)と言います。
(2)式でV=cとおくと、

地球の場合、定数を代入すると、r=0.887 [cm]、直径で約1.8 [cm] となります。
この半径より内側では光すら脱出できません。
光が出てこないということは、中を覗くこともできません。そのため、この境界線を地平線と言います。
アインシュタインによる相対性理論の式を解いても同じ式がでてきます。
ブラックホールそのものの大きさは理論的に無限小(特異点と言う)ですが、この重力半径をブラックホールの大きさと言っています。
よく、図鑑などで、「直径100kmのブラックホールがある」というように書いてありますが、この場合は、重力半径のことです。
■ 宇宙ではどのようにしてブラックホールができるか?
星をはじめ、宇宙にある天体は、中心に集まろうとする自分の重力(自己重力)を内部からの圧力で支えています。
しかし、何かのきっかけで内部からの圧力が弱くなったりすると、支えきれなくなってつぶれていきます。
そして、内部からの圧力が完全になくなってしまうと、限りなく小さくつぶれてしまうのです。これがブラックホール
ができる過程の1つです。
自分の重さ > 内部の圧力
これが、ブラックホールができていく条件の1つです(もちろん、他にもいろいろあります)。
ブラックホールになる天体の候補
重い星
質量が太陽の20〜40倍以上ある星が死ぬとき、内部からの圧力がなくなるため、星は自らの重力で限りなくつぶれて超高密度の天体になります。このとき、太陽の3〜10倍以上の質量のブラックホールができます。
しかし、厳密な質量の関係はあまりよく分かっていなく、元の星の質量が何倍以上でできるかやその過程は厳密にはわかっていません。
銀河中心
多くの銀河の中心には、太陽の数十万倍〜数億倍の質量のブラックホール(巨大質量ブラックホール)があると考えられています。
しかし、すべての銀河中心にあるわけではないため、理論的になぜできるのかはよく分かっていなく、現在も盛んに研究が進められています。
銀河の形成と関係しているのではないかとも考えられています。
■ ブラックホールの存在を調べる
光も出てこれないブラックホールは望遠鏡で直接見つけることはできません。
ではどのようにして存在を確かめるのでしょうか。
万有引力の法則から調べる
ブラックホールのそばを公転している星があると、その星の質量と公転軌道が決まれば、万有引力の法則を用いて
星の内側にある物体、すなわちブラックホールの質量が計算できます(例えば、太陽の質量が分からなくても、
水星の公転軌道と質量が分かれば太陽の質量は計算できる)。
このためには、いかにブラックホールに近い星を見つけられるかにかかっています。
銀河中心にある巨大ブラックホールを発見する最も有効な手段です。
ブラックホールのそばを通過する光を調べる
ブラックホールよりも遠くから来た光のうち、シュバルツシルト半径より内側を通過する光はブラックホールに吸収されてしまいますが、それよりも外側を通る光はブラックホールの重力によって曲げられてしまいます(正確には、ブラックホール周辺の時空が歪められるため)。
そのため、このような光を観測できれば、その部分にはブラックホールが存在していることを推測できます。
連星系を形成している場合
恒星とブラックホールが連星を形成している場合、恒星の運動と質量を調べることで相手の質量が分かるため、ブラックホールの存在を予測できます。
天文学の歴史上、最初に発見されたブラックホールである白鳥座X-1(cyg.X-1)もこの例です。
■ ブラックホールのQ&A
ブラックホールの内部はどうなっているの?
ブラックホールは光すら脱出できないため、内部を見ることはできません。
もし、宇宙船で内部に入れたとしても、その情報を地球に伝達する方法がありません。
しかも、ブラックホール内部では、極端に重力が異なるため物体が物質として存在することはできません。
わずか数ミリ距離が違うだけでも重力が全然違うためです。ですから、生身の人間が入ったとしても、木っ端微塵になってしまいます。
ブラックホールの性質は、「質量がある」ことと「回転している」ということだけ(らしい)です。
また、本体の大きさは無限小ということになっていますが、「無限小ってどういうこと?」と聞かれても、現在の物理学では理論的に答えることができません。
というよりも、そのようなことを考えていると、物理学は成り立ちません。ニュートンによって確立された物理学の基礎はすべて大きさを持たない質量のある物体(質点)が基準になっているので。
ホワイトホールってものを聞いたことがあるのですが?
すべての物を吸い込んでしまうブラックホールを進んでいくとホワイトホールという吐き出し口につながっているという話がよくあります。
これはSF作品による影響があまりにも大きいためでしょうが、実際にそのようなものはありません。
ブラックホールの内部は物が物質として存在できないため、そもそも内部を突き進んで行くことすらできません。
また、実際に宇宙空間に穴が開いているというわけでもありません。
ただ、一般相対性理論の中では、ブラックホールとは全然別に、ワームホールという宇宙空間のトンネルがあると予言されています(しばしば、ワームホールの出口をホワイトホールと言う場合がある)。
方法論は別にして、理論的にはこのワームホールを利用すると、タイムスリップや別の宇宙空間への移動も可能だと言われています。
このワームホールをブラックホールと結びつけて混同されている方が非常に多いですが、全然別のものですし、
実際にワームホールが存在するかもわかっていません(過去の宇宙には存在したかも知れないが、現在の宇宙では存在しないということになっている。)。
■ 相対性理論について
アインシュタインによって唱えられた相対性理論(相対論)には2つの理論があります。
「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」です。
この違いについてごく簡単に紹介しておきます。
- 特殊相対性理論
静止している観測者と高速で動いている観測者との時間のずれに関する理論。
例えば、
光速に近い宇宙船に乗ったとき、アンドロメダ大銀河まで行くのにかかる時間は、地球上から見れば200万年近くかかるが、宇宙船内部の人には十数年しか経過しないで行くことができる
という話など。
- 一般相対性理論
時空に関する理論。
重い物体の周辺では時空が歪められて光が曲がって進むといったことや、宇宙空間全般を記述する理論。
どちらも共通して言えるのは、光の速度を速度の基準とし、速度の低いものが光速を上回ることを禁止しているという点です。
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