■ 天文を学ぶ
たとえ、天文とは全く縁のない生活を送っているあなたでも、
「宇宙ってどうなっているのだろう?」
と思ったことがあるはずです。
実際には、天文を学ぶ機会は非常に限られています。
もともと社会一般に受け入れられている分野ではないですし、なによりも非常に高度な学識を要する学問でもあるためでしょう。
しかし、天文学に全く触れることができないかといえばそうではないはずです。
ここで、簡単に天文学に触れられる方法を紹介いたします。
- 書籍や図鑑、DVDなどのメディアで学ぶ
多くの方や、子供たちが天文を学べる非常に身近な方法です。
実際のところ、これらのものから学べる知識には限度があります。著者の多くが、”誰にでも理解できるように”という前提の下で執筆するため、どうしても簡素にならざるをえないためです。
しかし、第1線で活躍されている研究者の執筆されたものの中には、私たち現場にいる人間にとっても時には非常に得るものが多い場合もあります。
これら書籍の場合、執筆されて(あるいは改訂されて)5年程度を目安にしましょう。
天文学は非常に進歩が目覚しく、まさに「日進月歩」の世界です。そのため、10年も経ってしまうと、多くの内容が古くなってしまうためです。
- プラネタリウムを鑑賞する
美しい星空が身近でなくなった現在、都会にいながらも”美しい星空”を疑似体験できる非常によい機会です。
しかし、全国各地にあるプラネタリウムも経営が苦しく、閉鎖が相次いでいるのが現状です。日本のプラネタリウムの数は世界一といわれています。こうした資産が失われてしまうのは残念です。
プラネタリウムでは、天文学の知識を得ることは正直できません。上映プログラムにそのようなものがありませんし、なによりも、解説員がアマチュアであるため、物理的知識が乏しいためです。
- 公開講座で学ぶ
天文台や各地の大学、民間団体などが主催する公開講座には、第1線で活躍されている研究者たちが講演します。
ここで得られる知識は非常に内容の濃いもので、話題性に満ちた内容が多いのも魅力的です。
しかし、ある程度科学の知識がある方が対象となってくるため、小・中学生では正直難しいかもしれません。
- 天文台主催のセミナーに参加する
国立天文台では、毎年中学・高校・大学生を対象に、学年ごとに分けた体験学習のセミナーを行っています。
主に夏休みに行われるもので、第1線でも使われる機材を実際に利用できる数少ない機会です。天文に興味のある学生は参加してみるとよいでしょう。これらの案内は国立天文台のホームページで紹介されます。
■ 本格的に天文学を学ぶために
ここでは、実際に天文学を研究したいという学生に、私の経験も交えて紹介します。
星が好きで天文学を学びたい。という人は結構多いようです。実際に私もその1人でした。
天文学は数ある物理学の花形的存在でもあるためです。
星が好きならば、宇宙の謎を追究したいという気持ちはごく自然なことでしょう。
実際、現在第一線で活躍する多くの天文学者は、何らかの形で星が好きだったケースが多いようです。
ですから、「好きなことをとことんやりたい」人には、是非天文学の世界へ踏み出してください。
このページが少しでもそのような学生のためになれば良いと思います。
天文学を学ぶために必要なこと
- 物理、数学の学力
天文学を学ぶために必要なこと、それは相応の学力を身につけることです。
天文学は物理の一分野であるため、高校で物理を学ぶこと、物理を解くための数学の能力が要求されます。
天文学は分野も多岐にわたり、莫大な数学的計算と理論的解析で日々進歩しています。そのため、物理、数学の能力を高めることは必須です。
- 語学力
天文学をどこまで学ぶかに依りますが、大学院修士課程以上を目指す場合、語学力が必要になってきます。すなわち、論文を読み書きしたり、海外の学者とのコミュニケーションをとる力です。別に天文学に限らず、すべての理系分野で英語力は必須です。
しかし、相当な英才教育を受けてきた人や、帰国子女でもないかぎり、英語はせいぜい中学から、という人が多いのではないでしょうか。実際に私もその一人です。
また、理系の大学に行くと、どうしても英語は疎かになります。正直、大学の英語の講義だけでは実力は相当落ちます。ですから、英会話スクールに通ったり、英語を読む習慣をつけておくに越したことはありません。
しかし、大学院でほとんど毎日英語漬けになっていると、自然と読解能力はついてきます。なので、「天文学を学ぶために英語を勉強しなさい!」とは言いません。ただ、覚悟はしておきましょう。
- コンピュータの知識
天文学は莫大な数値計算で発展してきました。
俗に「天文学的数字で…」と言われるくらい、桁違いの計算をすることもあります。
特に、この十数年のコンピュータの急激な発展により、ますますコンピュータへの依存は高まっています。
観測・理論系を問わず、コンピュータの知識、特にプログラミングや数値計算のための言語(C,C++,fortran,mathematicaなど)は、早いうちから覚えた方が圧倒的に有利です。
ものすごいパソコンマニアで、家でバリバリ扱っている人以外、通常、大学に入ってからこれらの言語を初めて学ぶ場合が多いです(最近の高校は分かりませんが)。
なので、決して焦る必要はありません(もちろん、独学で習得するのはとてもいいことです)。
もし、独学で勉強する場合は、とりあえずC言語またはC++言語(本質的にはほとんど変わらない)を勉強することを勧めます。かなりツブシが利きますし、最もユーザーの多い言語でもあるためです。
また、現在ではパソコン=Windowsという社会になってしまいましたが、研究で用いられるのは主にLINUX(UNIX)です。
Windowsを邪魔者扱いする研究者もかなりいます(ウィルスの問題、価格の問題などから)。
自宅でLINUXを使っているという人は少ないかもしれませんが、機会があれば使っておくとよいでしょう。
話は逸れましたが、これらコンピュータの知識はこれからの時代、就職にも大変有利に働きます。なので、知っていて損はありません。
- 狭き門を進む根性
天文学を学ぶ場合、相当な志が必要だと思います。なぜなら、
天文学の知識を直接生かせる職業がない
ためです(天文学に限ったことではありませんけど)。まあ、出版社や学芸員という道も多少はありますが。
「ロマンだけでは飯は食えぬ」
って通りです。
天文学を何かしらの形で専攻した学生の多くは、全く関係のない仕事に就職する場合が多いのが実状です。例えば、コンピュータの知識を活かす仕事(システムエンジニア)や、製品開発(製造業)です。私の場合、現在は天体の観測・研究をしていませんが、天文学を研究する上で重要な知識(光に関する物理知識や望遠鏡技術等)は現在の職業に多々活きています。幸運にも宇宙に関する仕事で生活できています。
したがって、やるからには学者を目指す!くらいの意気込みが必要です。ただ、当然レベルの高い闘いが強いられます。
業界(天文研究者の世界)の格言に、
「学位は足の裏についたご飯粒のようなもの」
という言葉があります。
取らないと気になるけど、取っても食べられないことを意味しています。つまり、博士号の学位を取っただけでは食べていけない世界だということです。
それだけ研究者になるには覚悟がいることでもあります。
天文学を専攻した学生の進路
天文学を専攻する = 星を見ていればいい
という学問ではありません。
アマチュアの場合はその傾向にあるので、学問としての天文学もそのように見られがちですが、全くそのようなことはありません。
天文学を研究するといっても、観測系の研究室の場合でさえ、実際に望遠鏡で天体を観測するのは、1年のうち、数日〜長くても1週間-2週間という程度です。
残りの350日は観測データの解析や機器の開発、解析するためのソフトウェアの開発に当てられます。
特に観測系の場合、誰も発見したことのないものを発見する必要がありますので、そのためにはまだ世界で使われていない観測機器の開発が必要です。
ですから、実験室はパソコンなどが数台あるほか、半田ごてやオシロスコープや電気回路の部品が無造作に(本当はいけませんが)置かれているような感じで、ほかの理系の研究室となんら変わりません。
そんな研究室を出る学生は(研究者になる場合を除いて)、データ解析のコンピュータの知識を生かしたプログラマーなどのシステムエンジニアや、製造業(メーカー)の技術者、公務員などの文系就職(たまにですが)など、非常に多彩です。
就職活動で、自分の研究テーマを伝え、”ただ星を見ているだけ”という一般概念を払拭できれば就職はかなりツブシが利きます。
天文知識を直接生かせるようなプラネタリウム関連の仕事などは、募集そのものがなかったりするなど、その世界に入れるのはごく稀で、ほとんど運です。甘く考えないほうがいいでしょう。
天文学を学べる学校
天文学は高度な学識を必要とするため、学べる大学は限られます。
特に、観測やそれに伴った機器の開発をする研究室はさらに限られます(社会に直接貢献できる分野でないし、莫大なお金がかかるためです)。
したがって、大学を選択する際には、「○学部○学科がある」ことを調べるだけでなく、「○学科の○研究室で○○という教授(助教授・助手)が○○○の研究をやっている」というところまで調べなくてはいけません。もちろん、大学院の場合には言うまでもありません。
ここでアドバイスしたいのは、「天文学科」と銘打っている大学は東京大学のみです(だったと思います)。そのため、なかなか見つけにくいのですが、ほとんどの大学では「物理学科」や「自然科学科」などの多様な分野の1つのカテゴリとして「宇宙物理学」という形でまとめられていることが多いです。そのため、研究室まで調べる必要があるわけです。
なかなか難しいとは思いますが、一口に天文学と言っても、「銀河」「分子雲(星雲のこと)」「宇宙論」「太陽系」などさまざまな分野があります(実験系・理論系を問わず)。また、例えば同じ「銀河」に関する観測でも、「X線」、「可視光線」、「赤外線」、「電波」など、観測する波長も様々です。また、「宇宙線」や「重力波」なども「天文学」の1分野といえます。ですから、自分が何の研究をしたいか考えるのも重要です。
自分の進路を決定する要素は、
- 天文学の何の分野をやりたいか考える。
- 「観測系(機器・ソフト開発を含む)」「理論系」かを決定する。
- 観測系の場合、扱いたい波長を考える。
- 大学を調べる。
という感じでしょう。
気になる大学がある場合には、直接教授などにメールを送ってみてもよいでしょう。相当性格の悪い人(いるにはいる)か、機嫌が悪いか(かなりあり得る)、多忙なとき(基本的に常に多忙)以外は、返事をきちんと出していただけるはずです。
全般的に言えるのが、「観測(実験)系」は(旧)国公立大学で、「理論系」は国公立・私立ともに学べることが多いようです。中には例外もありますが。
しかし、希望する研究室のある大学に入ったからといって、そこの研究室に入れるとは限りません。研究室の決め方は大学にも依りますが、通常は”成績順”です(数年前までは”くじ引き”などという学校も多かったようです)。したがって、希望する研究室に入れるよう、1年次から、コツコツ勉強しましょう(反省)。とくに、天文学に関する研究室は、ほとんどの大学では人気があり、必ず定員オーバーになるそうです。
試験(学力)の関係上、滑り止め受験などで、どうしても天文学のない大学に行くことになってしまう場合も、あきらめる必要はありません。そこで物理学を学びましょう。
ちなみに、“入学時の入試成績の1位=首席卒業”というケースはほとんどありません。なので、大学在学中にしっかり勉強すれば、いくらでも活躍する道は開けてきます。
また、理系の場合、物理学科以外でも物理学の基本事項を学びます。なのでそれをしっかり身につければ、大学院から天文学を専攻することも十分可能です。実際に、私の身近にもそのようなパターンの人が多くいます。
私の場合、大学入学当時はまだ宇宙物理系の研究室がなかったのですが、幸か不幸か、在学中にできたため、そこの研究室に入りました(入れました。と言った方が正確かな…)。その後、観測に進みたいということで、観測系のある大学院に進みました。
全国の天文学を学べる大学は、愛知教育大学の沢 武文教授が作成されたHPで調べることができます(かなりおススメ。本人から紹介を受けるまで私も知りませんでした、、、)。
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